【感想文】短編漫画「キスをしても触れあえない」


「キスをしても触れあえない」
著者:佐竹慎
発行日:2013年8月11日
発行元:不明人種
A4サイズ

先日の文フリで、作者の佐竹さんから直接購入させていただいた「キスをしても触れあえない」。
Twitterでイラストをたびたび拝見することはあったけど、恐縮ながら漫画作品を読んだのは今回が初めてだった。

「キスをしても触れあえない」は短編百合漫画で、制作年順に4つのお話が収録。
(百合がなんなのか分からない人は検索してね・笑)
ゲストとして他誌で発表された作品をこの一冊にまとめられた模様。
単刀直入に読んでどうだったか。とても面白かった!!
それぞれページ数は少ないけど、物語の世界観がしっかりと凝縮されている。
それ(世界観)をシンプルに伝えてくれるから、一気に引き込まれる。
多くを語り過ぎずに、重要な要素を残して削ぎ落としている印象だった。
タイトルの「キスをしても触れあえない」は、4つ目のお話のタイトルだけど、
この切ないタイトルは4つのお話全体に共通(共有?)してた。

以下ネタバレ含むので、未読の方はご注意を。

「帰路の店」
戻ってくる伴侶のために店を構えた妻の最高のサプライズ。
13年も二人の間には空白があって、13年前の空(=記憶)が「瓶」に圧縮されている。
この設定がとても美しい。空を瓶に詰めるって!
しかも一日だけではなく、次の日もまたその次の日の空へと、瓶の中の空は続いているんだろう。
アルバムを眺めるように瓶の空を見つめて、徐々にその記憶が自分たちのモノだったと思い出す、
その過程がとてもロマンチックで可愛いお話だった。

「遅くなってごめんね」
天使になるためには最終試験を突破しないといけない。
ハルの試験内容が幻想的で且つアクション盛りだくさんだった。
試験を終えて合格したハルとティナは晴れて天使となる。
ハルは桜に、ティナは人間の赤ちゃんとして現世に降りてくる、という解釈で合っているのかな。
赤ちゃんや花や植物が天使の生まれ変わりだとするなら、なるほど、
生き物の命は清廉で美しいと謳っているようにも感じる。

「三か月前彼女が突然丘へやってきた」
一番好きなお話だった。
一針はとても小さいけど出来上がった衣装はとても濃密で美しい。
その一針が、二人が過ごした三か月の日々とリンクしているように見えた。
ささやかな一日が三か月となるととても濃密だったんだろうな。出来上がった婚礼の衣装のように華やかで可憐で。
婚礼の衣装を着てホメナが丘に現れて、二人はちゃんと通じ合っていたことが嬉しい。
温かさと別れの切なさが交差する!
あとがきのエピソードに読者も救われるようで、あとがき含めてとても楽しかった!

「キスをしても触れあえない」
なんだか不思議な会話劇だなぁと思いながら読み進めて、あとがきを読んで、そういうことだったかと、納得。
千代は何も経験することなく、少女のまま死んでしまったんだろう。
さくらが幼い頃から知り合っていて、やっとさくらは千代と同い年になった。
そのうち千代の年齢をさくらは追い越すのだろう。
少女のままの明るく何も知らないままの千代と、これから大人になっていくさくらの対比が感じられて、
このお話も切なくなった。(勝手に妄想補正しております)
全て読み終えてからまた表紙を見返すと、その切ない物語が押し寄せた。

◆◆◆



「いつか遊びにいくよ」
著者:佐竹
初版発行日:2012年10月6日
発行:morgue
A4サイズ

コピー本「いつか遊びにいくよ」も読了。
くるや君、なるほど、この子がくるや君か…!
愛されるより殺して欲しい人、、、自分に興味を持った途端に興醒めしてしまうのかしらん?
人形みたいだけど、その内面は複雑不可解、ミステリアスな魅力を感じるくるや君。
7Pの「着てくれるかな?」のコマの顔がすげーイイ。
17Pの「先生は…やさしいよ。」って肩はだけて両手組んでる姿、おい、やめろ、箍が外れるッ!
お互い求めているものが明らかに違うと分かり合ってしまったから、疎遠になっちゃったのね。
それにしてもエロ漫画のナニが面白いって、やっぱ音だよね。

どちらもポストカード付きで大満足!佐竹さんの漫画、また読みたい。

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